研究テーマ
グリッド環境に対応した分子動力学法の開発と分子動力学法・分子軌道法連成法の開発
グリッド環境に対応した量子化学シミュレーション・システムの設計と開発
グリッド環境に対応した生体組織シミュレーション・システムの設計と開発
ヒトの臓器、器官、細胞におけるグリッド上のシミュレーションモデルの設計と開発
グリッドコンピュータを利用した蛋白質立体構造の予測に関する研究
グリッドによる分子動力学と分子軌道法の融合とその創薬への応用に関する研究

ゲノム科学は生命科学全体に対してパラダイムシフトを生じさせた。つまり、世の中は有限の非常に複雑な組合せであり、生物個体もプロテオーム、セローム、フィジオームとそれぞれのレベルで非常に複雑なネットワークを作り、それがさらに三次元的なレベル間で結びついて形成されていると理解されるようになった。このように生命科学を理解すると生体シミュレーションには階層的にさまざまなレベルのものがあり、ここがナノシミュレーションとは大きく異なる点である。

本研究グループでは、電子状態から蛋白質、細胞、器官のシミュレーションを独自のアルゴリズムで行っているコンテンツを集積し、データグリッドと融合したデータベース連携と、階層的に異なるレベルの連成計算(ハイブリッド化)を目的としている。
参加コンテンツ一覧

■電子状態シミュレーション1
AMOSS (Ab initio Molecular Orbital Simulation on Supercomputer)
NEC基礎研究所が開発した非経験的な分子軌道法計算のプログラム。巨大な系の並列下における高速計算、高精度計算が可能。CI( Configuration interaction:配置間相互作用)計算も開発中。(figure 1)

■電子状態シミュレーション2
DFT (Density Function Theory) / Generalized DFT
大阪大学大学院理学研究科山口兆教授、山中研究員(同客員助教授)のグループが開発した密度汎関数法の計算および一般化密度汎関数法のプログラム。通常のDFT(例えば汎用G03プログラムにあるスピン分極型DFT)では扱えないような、スピンフラストレーションのある系、スピン縮重、スピン傾斜をともなうような系に対して計算が可能。それらを基に生体化学反応、特に酸化還元反応(例えばフェレドキシン)の複雑な反応に対してシミュレーションができる。

■蛋白質複合体シミュレーション
prestoX-basic
In silico drug screeningを目的に、産業技術総合研究所JBIRC、大阪大学蛋白質研究所、横浜市立大学、日立製作所、富士通で共同開発中の古典力学に基づく分子動力学計算プログラム。(figure 2)

■蛋白質フォールドシミュレーション
アミノ酸配列情報からの ab initio 蛋白質立体構造予測
神戸大学理学部高田彰二博士らの研究。国際コンテストCASPで高い評価。

■細胞生理シミュレーション
薬物によるヒト・心筋細胞のイオンチャンネルの阻害を機能的に理解するシミュレーション
大阪大学大学院医学系研究科倉智嘉久教授らの研究。

■器官・組織シミュレーション
表面筋電位発生と肺内換気分布シミュレーション
大阪大学大学院情報科学研究科赤澤堅造教授および北岡裕子博士らが開発中。筋電位信号発生シミュレーションや肺の構造機能解析による診断とシミュレーションによる治療予測

figure 1
figure 2
■バイオフーガを実現させるための方策
  1. アプリケーション・プログラムのパーツ化
  2. 異なるアプリケーション・プログラム間でのデータ授受の標準化
    ・UDS-XML(Universal Data Set-XML)
    ・スキーマの設計と各種ツールの整備
■バイオフーガ上での分子軌道法 (QM)と分子動力学計算(MM)の連成
QM/MM連成計算を、バイオフーガの概念の中で行うことは、ダイナミックな性質が本質的な生体分子システムを、精度を落とすことなく計算したいというニーズに対応する。
本グループのコンテンツAMOSS (QM)/prestoX-basic (MM)を例に実施した。(figure 3)
 
figure 3 →動画を見る
  1. 種々のプログラムのグリッド・システム高度利用技術の研究・開発
  2. バイオフーガによって種々のプログラムのハイブリッド計算を、グリッド上の異なるマシンで効率よく動かす技術開発
以上を電子状態、生体高分子、細胞・器官に対するバイオ分野のシュミレーション・プログラムで適用し、生命科学のパラダイムに合致した利用価値の高いものとして実証する。

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